JaSPCAN日本こども虐待防止学会で発表【学会報告】
11月は「児童虐待防止推進月間」です。この節目に合わせ、札幌で開催された日本子ども虐待防止学会で大阪の児童養護施設「入舟寮」の職員が日頃の実践について3つの演題発表を行いました。
入舟寮が大切にしている「子どもの声を聴き、権利を守る」取り組みについて、その内容をご報告いたします。
① 施設養育における権利擁護 〜「つぶやき拾い」の実践〜
中野心理士からは、入舟寮で継続している「つぶやき拾い」について報告しました。 子どもたちが日常生活の中でふと漏らす言葉(つぶやき)には、彼らの本音や願いが隠されています。これらを丁寧に拾い上げ、一つひとつに向き合うことで、子ども自身が「自分の意見を伝えてもいいんだ」と感じられるよう、意見表明権の行使を支える実践を共有しました。
② 里親支援とライフストーリーワーク(LSW)の循環
兵庫大学の田邊教授、仙台青葉学院短期大学の平田先生、キーアセットの島津氏との共同研究として、里親家庭へ委託された後のライフストーリーワーク(生い立ちの整理)についての発表を行いました。 施設から里親家庭へ移った後も、子どもが自分の歴史を大切にし、肯定的に捉えられるような切れ目のない支援の在り方について、多機関での連携視点から考察しました。


③ デザイン国語によるセルフアドボカシー支援
城村施設長は、大阪公立大学の伊藤嘉余子教授らのチームと共に、創作活動を通じた自己表現プログラムについて発表しました。
今回は高校生2名が参加した「たちつてトラベル・未来地図づくり」の事例を紹介。絵や立体制作を通して自分の得意・不得意や好きな場面を「色分け」して可視化していく過程で、心の中の声と対話し、自分だけの「未来地図」を描き上げました。この活動は、子どもが自分自身の価値観に気づき、将来を描くための大きな一歩となりました。

◆私たちが大切にしていること
今回の3つの発表に共通するのは、「子どもたちの声にならない声」を形にし、本人もまだ気づいていない想いをつむぎ出すという姿勢です。
支援者の役割は、答えを教えることではありません。「子どもが自分の思いに気づき、それを自分の言葉として発する瞬間に、一番近くで寄り添うこと」だと考えています。
今後も入舟寮では、温かな愛着関係(アタッチメント)を土台としながら、子どもたちが「自分を理解し、自分で人生を選択していける」よう、日々の「つぶやき」を大切にしたケアを深めてまいります。