保育士 職員インタビュー
- 松木さん
- 保育士
里親支援専門相談員
- 子どものことを第一に考えながら、
- 一般の方に里親制度や現状の動きを
- 広げる活動をしていきたい
- 里親支援専門相談員とはどのようなお仕事ですか?
- 里親になる方を増やす広報的な活動や研修、里親になった後のケアをすることが主な業務内容です。児童養護施設、乳児院に配置されます。
- 里親支援専門相談員になった経緯は?
- 児童養護施設の現場で保育士として6年担当し、産休育休を1年取って復帰した時に、大阪市で里親支援専門相談員の制度ができたんです。入舟寮にも一人配置することになり、その第一号です。なりたくてなったというよりは、流れに乗ったような感じです。
- そもそも児童養護施設で働こうと思った理由はなんですか?
- 保育士になろうと専門学校に入り、実習で児童養護施設に来ました。実習施設は希望制ではなく、学校の振り分けでたまたまです。 実習で衝撃的だったのは、中学生の女の子に頬を叩かれたこと。いわゆるビンタですね(笑)。特に喧嘩をしたとかでもなく、うまくいっていると思っていた時に突然だったので本当にびっくりしました。その後のミーティングで、職員の方に「他人との距離感をはかるのが苦手」「試し行動」「愛着に課題のある子」などと聞きましたが、わかったようなわからないような…、モヤモヤが残り、それをクリアにするために就職したのかもしれません。学校の先生に児童養護が向いていると言われたことも後押しになりました。
- 保育士から、里親支援専門相談員への転身はいかがでしたか?
- その前から、入舟寮では週末里親制度を積極的に利用していたので、里親というものがまったくわからないということはありませんでしたが、里親支援専門相談員(以下、里専)としては、何をどうしていいかはさっぱり。正直1年目は実質的な活動はほとんどできず、忙しくも充実していた現場の頃とのギャップに悩んだこともありました。現在、大阪市内では16施設に里専は配置されていますが、まだ4、5名しかいなかった頃です。 2年目、大阪市内の里専の委員会活動が始まったことで里専同士の連携ができるようになり、外に出る機会が増え、2・3年目で里親を増やすための広報啓発の仕事に取り組み始めました。ポスターを作ったり、イベントのお手伝いをしたりです。 里親会という里親の方々の集まりがあります。会長さんに「何かお手伝いできませんか」「お困りのことはありませんか」と聞いてまわるのですが、30歳そこそこの里専にお声がかかることは、そうなくって。まだ里専の役割も明確でなかった頃には「里専を置くくらいなら、そのお金を直接的に里親のために使って欲しい」と言われたこともあります。 それが4年目ごろから段々と、児童養護施設職員の専門性を理解いただき、ゆっくり扉が開かれてきました。施設での子どもとの関わり方、ノウハウが、里親さんにも役立つということや、子育てに対して共通の思いがあることが地道な働きかけにより伝わったのだと思います。 現在のメイン業務は入舟寮の子どもの週末里親さんとの連絡や相談窓口、外部へは里親さんになりたい方向けの相談会や研修のサポートや、里親家庭の家庭訪問です。ただ、コロナで縮小気味ですね。イベントも対面で参加されたい方が多く、なかなかできていないのが課題です。今後はオンラインで気軽に参加できるものを企画していきたいと思っています。
- 児童養護施設から里親に引き取られるお子さんは多いですか?
- 乳児院から里親さんへという子どもはいますが、児童養護施設に行った時点で里親は難しいのが実情です。既に集団生活に慣れ、意思をしっかり持った年齢のお子さんにとっては、いきなり里親にというのもなかなか厳しいんですね。 入舟寮でも、週末里親の制度を使っている子どもが3~4割いて、子ども本人がその里親さんに自分を引き取って欲しいと思う子も。そこから養育里親に移行するケースがないわけではありません。ただ、その8割は不調で戻ってくるパターンが多く、あまり望ましいケースとは言えません。 週末里親は月1回の関わり。その時には双方とも良い顔しか見せていないのかもしれませんね。お互いこんなはずではなかったと、元いた施設に枠があれば戻れますが、そうでなければ別施設になります。
- 仕事のやりがいはなんですか?
- 里親さんの気持ちに寄り添い、信頼してもらえた時です。里親さんにとって施設職員は、対立相手と誤解されてしまうこともあるのですが、子育てにおいては、里親も、児童養護施設も、実は抱えている悩みは共通なんです。子どもに対して「出て行け」と言えないし、言わないけど、その気持ちはわかる、イラっとする気持ちを吐き出し共有できるのは、里専ならではかもしれません。 一般の方が里親制度や、施設の子どもの現状や課題を知る機会は、以前よりは増えているとは思います。でも、まだ足りているとは決して言えません。子どものことを第一に考えながら、動きを広げる活動をしていきたいです。
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